地方祭、二百年の先へ。(3/3)
この記事は広報とうおん2021年11月号特集をWEBに転載したものです。公共施設や市内コンビニ、銀行、病院などにある広報紙はご自由にお持ち帰りください。
東温の獅子舞の起源は200年以上前に遡る。
青年団や若い農業者を中心に普及し、今日まで伝えられてきた。
時は過ぎ2020年、
新型コロナウイルス感染症が世界に猛威を振るい、
イベントや伝統行事は相次いで自粛。
生活は一変した。
感染拡大から1年半。
秋晴れの空に懐かしい音色が戻り始める。
10月10日、頭を垂れる稲穂が広がる景色の中で地方祭が催された。
伝統を絶やさぬよう当日を迎えた各地の様子を、カメラが記録する。
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牛渕地区は、大人だけでなく子どもにとっても祭りへの思いは強い。
「去年よりも状況は厳しく、秋祭りの開催は難しいと感じていました。下火になったからこそ、地域の皆さんが勢いをもたらしたんだと思います」
そう話すのは浮嶋神社秋祭奉賛会会長由井正人さん(44)。
五穀豊穣を願う牛渕のねり行事は市無形民俗文化財に指定されている。
相撲練りや豊栄の舞など中予地方でも珍しい伝統行事。
昨年は中止した子どもたちによる獅子舞も今年は開催できた。
牛渕の獅子は小学校5年生から中学校2年生までが中心となって舞う。
浮嶋神社秋祭獅子係長の近藤恵太さん(32)に話を聞いた。
「当初は獅子舞を教えるだけの予定でした。練習を重ねるにつれ、子どもたちから“祭りで獅子舞をしたい”という声が出てきたんです。今年の獅子舞の演舞は練習の成果を披露したいという子どもたちの願いと、伝統を引き継いでいきたいという大人たちの思いが込められています」
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有志で参加した三好真和さん(写真右・15)は小学校から獅子舞を始めた。
「今年の太鼓は自分たちが教える役目でした。技術を伝えることは難しい。ですが、全力を尽くして獅子を舞う気持ちを伝えることはできました。来年も続けたい」
伝統を受け継ぐことを誓った。
ねり行事を見物した親子は
「小さい頃から牛渕の獅子舞の太鼓の音を聞くと気持ちが高ぶります。自分の子どもにも経験してほしい」
獅子舞の演舞に目を輝かせた。
牛渕の獅子舞の伝統は今後も次世代の子どもたちに引き継がれ、留まることはない。
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多くの地区が規模を縮小して開催した今年の秋祭り。伝統行事をやめるのは簡単で、続けるにはエネルギーが必要だ。さらに難しいのはその熱量を“共有”すること。周囲への共有。他地域への共有。次世代への共有。熱量の共有が“共感”へ変わり、伝統行事は受け継がれていくのだろう。