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「新しい農と食」。まちの流れをつくる農家と料理人をインタビュー(1/3)

新型コロナウイルス感染症が世界に拡大して1年半あまりが経ち、長く苦しい我慢が続いている。そんな中、まちに新しい流れを作ろうと動く2人を、3回にわたってご紹介する。

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イタリア料理OTTOオーナー矢野松明さん

国道11号線を西条方面に。重信川に架かる新横河原橋を渡った先に印象的な“猿”の壁画が装飾されたお店が見える。3月14日に開業10周年を迎えたイタリア料理OTTOオーナー矢野松明さんは「人が店をつくり、店がまちをつくる」を理念に、東温市にある資源を率先して取り入れてきた。

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人気のキッシュ。厚めの生地に玉ねぎの優しい甘みが広がる

東温市産の野菜を使うことはもちろん、ときには滑川地区の湧水を使って茹でたパスタまで提供する。「“ないこと”をしたいという気持ちは常にある」と矢野さんは話す。

矢野 大阪で10年やっていて、そのまま大阪で…っていうのもありましたね。でも子どものことを考えたときに故郷の愛媛を選択したんです。お店を出す場所は、当然立地から松山か、地元の八幡浜を考えるのが無難だと思うんですけど、『ゆかりのないところでやるのが自分にはあっている』と思って東温市に決めました。

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スタッフの育成にも力を注ぐ。「独り立ちできるよう、料理だけじゃなくて経営面も教えられる部分がある」


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パスタランチには旬の食材を使う。もちろん東温市産が拘り。


これまで、サイクリストが立ち寄りやすいようなランチボックスの提供や食品ロスの削減など、多面的に展開した。その中でも地元農家と連携する「東温食材研究会」は新しい取り組みの一つといえるだろう。

矢野 農家さんに『今こんな食材がたくさん出るから作って』と依頼をかけて、味や店での提供量を共有しています。農家側は収入が確保できるし、お客様には美味しい料理を提供できる。三者にメリットがあります。

矢野さんが開業10周年を迎えるに当たって考案したのがパクチービール「Toby white ale(トビーホワイトエール)」だ。

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バランスの良いベルジャン系。飲みやすさの中にパンチがあり、パクチーとレモンの爽やかな風味を加えた。ラベルのキャラクター「トビー」は矢野さんのデザイン。

パクチーは3年前から地元農家と愛媛県が東温市での産地化に取り組んでいるエスニック野菜。生産するのは東温食材研究会メンバーで、東温市青年農業者協議会にも所属する廣川慎太朗さん。

矢野 きっかけは慎太朗と『何かやりたいよね』ってぼんやりした話から。パクチーを根付かせたい想いがあったので、じゃあパクチー使ってビールを作ろうってなった。


醸造は松山市三津浜にある“麦宿 伝”が手がけた。矢野さんは「伝くん(麦宿伝オーナー)は、少量のロットで小さな店舗にも良心的な価格で提供してくれる。地のものを使って“まちに貢献”する思考の部分が一致した」と話す。

3人でミーティングを繰り返した。試行錯誤し、最終的にはパクチーの根っこと種、レモンを入れることで落ち着いた。「あんまりパクチー感出しすぎて嫌われないように(笑)、飲みやすいように仕上げた。構想は夏終わり。半年くらいかかったかな」。


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「デザインも商品サービスの一つ。トビーは0歳で、今2歳の姿を作っています」。矢野さんは商品と一緒にキャラクターも成長させていきたいと話す。「アレンジしてトビーも変化させたい。例えばハロウィンにはチリを入れてドラキュラにしたりとか面白いかな」。

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矢野さんが廣川さんと出会ったのは8年ほど前。意気投合し、飲み仲間になった・・。>>続きは第2回で

このnote記事は広報とうおん2021年6月号に掲載した内容をもとに作成したものです。

05211500 広報とうおん2021年6月号