「新しい農と食」。まちの流れをつくる農家と料理人をインタビュー(3/3)
コロナが世界に拡大して1年半あまりが経ち我慢が続く中、まちに新しい流れを作る2人を、3回にわたってご紹介します。
前回までの記事👇
これまで開業10周年、イタリア料理OTTOオーナーの矢野さんと、エスニック野菜の通年栽培や東京への販路を開拓する農業者廣川さんを取材した。
矢野さんが次に手がけるのは。
矢野さん 実は松山市にOTTO2号店を出します。名前は“PePPs(ペップス)”。イタリアンではなく、スローなファストフード店がコンセプトなんですけど。
矢野さん これからの時代、ライフスタイルや地域のコミュニティは企業、飲食店、消費者を巻き込んで変わっていくと思っていて。地域や消費者への貢献と業界の発展を模索したい。そんなお店をつくりたい。
松山市湊町は中心市街地。目指すのは地域に根ざしたサードプレイスだ。
矢野さん コロナ禍で滞っている流れを新しくするような。OTTOはもちろん、地域や周りの人を巻き込んで作り出すのが面白い。やってることは料理なんだけど“まちの一つの機能”になる場所。
新店舗の責任者に選んだのは“同じ思考”を持つ人材。松島卓さんが矢野さんを訪ねたきっかけは廣川さんだった。
松島 卓(たく)さん
松島さんは当時をこう振り返る。「松山のお店でたまたま納品にきてた廣川さんに東温市のお店がスタッフを募集していることを聞きました。次の日には話を聞きにきてましたね」。
OTTOでスタッフとして働く松島さん。矢野さんは「考え方やまちに対する思いを抽象的に共有しました。スキルはもちろん伸ばせるから、人に惚れて声をかけたかな」と信頼を寄せる。
矢野さん 当時、(松島)卓ちゃんは独立、僕は2号店を考えていて。2人でテナントを探してまちをぶらぶらしてる時から『いつ切り出そうかな』ってソワソワしてた。僕が10年お店を構えて分かったことを持っている。重なる部分がほぼ一緒だから、卓ちゃんなら形にしてくれる。
「人と裏表なく真っ直ぐに向き合いたい」。周囲を想う松島さんが作り出す空間がまちの流れをどう変えるか期待したい。
◇
チャレンジを続ける2人の会話を傾聴した。
廣川 僕は数人集めて農業経営してるんです。一人でできる品種って限られるし。儲かる農業にしたいっていうのは考えてますね。
矢野 憧れの職業にしたいよね。飲食店もそう。コロナ禍で苦しい時代だけど、今の若い人たちに起業に対して良いイメージを持ってもらいたいっていうのはあるよね。そこは僕らが元気づけていかないと。
廣川 地産地消も大事ですよね。東温市に来てもらった人が地の野菜を食べられるお店は必要ですよね。東京出店は違った切り口。愛媛産は東京では見かけなくて、収穫した次の日にお店に並べられるのが直営の強み。地元なんで、そこを足がけに開拓しようかなと。
矢野 一個人の農家が東京に直接持っていくってありそうでなかったよね。エールとかサンバルソースも東京で販売するし。PePPsでもめっちゃ使うと思うよ。
廣川 いいですね。この時期に2号店出すっていうめっちゃ前向きな感じが。
矢野 慎太朗みたいに、農家が卸しまでやると鮮度が強みになってくる。より美味しい料理を提供できるってのがいい。それだけで差別化されてる。
廣川 一般のお客様が家にいる時間が長くなっている今だから、野菜を買う頻度も同じく高くなってますね。
矢野 海外の人が入ってきてるこの時代、エスニック野菜もめっちゃ売れるよね。あ、そういえばPePPsのロゴできたよ。三角形の角にPePPsって入れて、“循環”とか“巡る”って意味を込めてる。今の流れにうまく溶け込みながら、大きな流れにしていきたいよね。
廣川 かっこいいですね〜。ほんま思ってます?(笑)
矢野 ビールちょうだい(笑)
廣川 まぁ僕は農家なんで、若い人たちが農業に参入して、もっと農業の裾を広くしたいかな。
矢野 お前そんなキャラちゃうやろ(笑)。昔とは違うもんね。いろんな業界課題がコロナでばっと出てきたから、僕らはそこにチャレンジしていこな。
このnote記事は広報とうおん2021年6月号に掲載した内容をもとに作成したものです。