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地方祭、二百年の先へ。(1/3)

この記事は広報とうおん2021年11月号特集をWEBに転載したものです。公共施設や市内コンビニ、銀行、病院などにある広報紙はご自由にお持ち帰りください。

東温の獅子舞の起源は200年以上前に遡る。

青年団や若い農業者を中心に普及し、今日まで伝えられてきた。

時は過ぎ2020年、
新型コロナウイルス感染症が世界に猛威を振るい、
イベントや伝統行事は相次いで自粛。

生活は一変した。

感染拡大から1年半。
秋晴れの空に懐かしい音色が戻り始める。

10月10日、頭を垂れる稲穂が広がる景色の中で地方祭が催された。

伝統を絶やさぬよう当日を迎えた各地の様子を、カメラが記録する。



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「コロナを正しく恐れ、立ち向かう力になるようなお祭り。この揚の里がますます栄え、ふるさとづくりにつながるお祭りになることを願う」

宮司の言葉に耳を傾けて神輿を囲むように座る北方社中会の皆さん。

静かな境内には爽やかな風が吹いていた。

境内横では北方獅子舞保存会の顔ぶれが出番を待つ。
揚神社で獅子を演じたのは、向井大輔さん(写真右・39)と村上和彌さん(写真左・36)だ。

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「イベントがない昨年は書物の見直しや、獅子や太鼓の修繕で終えました。少しでもできるのとできないのとは違います。どんな形であれ、やっぱり獅子は良いですね」

演じた直後、向井さんは眩しい笑顔を見せた。

北方では開催に向けて感染対策を強化。参加者も限定し、広い呼びかけも無くした。噂を聞きつけ境内に集まった観覧者は、久しぶりの獅子を待ちわびた。

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演目は神楽のみ。早く小気味良い太鼓の音が響くと、2年ぶりの獅子に観覧者の目は奪われた。

「どこか生活にもメリハリがなくなっていました。舞の最中、視界はありませんが、皆さんから届く声援に元気をもらいました」

と話す村上さん。流れる爽やかな汗を拭った。

獅子舞の継承は大部分が口伝によるもので、披露の場がないと獅子舞自体を知る機会がなくなる。

「来年コロナが落ち着くことを願って、多くの場所に行き、多くの人に獅子舞を知ってもらう機会を増やしたい。若い人たちが出て行くのは仕方ないと思う。時代にあったできることを模索しながら伝統を絶やさず、活動を続けたい」

と話す2人。

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舞殿から獅子が去ると、会場からは惜しみない拍手が送られた。時代の困難に遭いながらも、北方の獅子舞は揚の里に住む人々の心に刻みこまれている。

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北方獅子舞保存会の皆さん



「獅子を見るだけでも熱いものが込み上がります」と話す北方社中会の松本司さん(38)は新年の抱負に“僕たちの祭りはもう始まっている”と記した。

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「全員で神輿を担ぐ。一つのことに向かっていくこの一体感こそ、祭りの醍醐味っていうのかな」

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2年ぶりの神輿を担ぐ北方社中会の皆さん。揚の里に熱気が戻り始めた。


言葉では覆いきれない喜びは、笑顔だけで感じ取れた。この日確かに、200年続く伝統は受け継がれた。

2/3へ続く>>


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